ダメなおじさんの、ダメな人生 その19

その後、数週間かけて準備をして、僕と彼女は一緒に住み始めました。

彼女の生活を優先した結果、僕の通勤距離は倍になり、起床時間もかなり早くなりました。

しかし、そんなことあったの?と言うくらい、毎日が幸せでした。

休日には、豪華な食事をする訳でもなく、どちらかと言うとインスタント麺で手抜きをしていました。どこかへ遊びに行く訳でもなく、アパートの自室でゴロゴロしていました。贅沢と言えば、映画をレンタルして寝っ転がりながら見るくらいでした。

でも、そのたわいのない時間さえ、僕にはとても幸せだったのです。

 

1年くらい後に、僕は結婚しました。

小さな結婚式を挙げました。

かなり日程に無理がある新婚旅行へも行きました。

アパートの家賃より安い月払いで一軒家に住めると聞き、ローンを組んで家を買いました。

いつの間にか、新しい命が、彼女の中に宿りました。

 

これまでの、

パッとしない、

ちょっと残念な、

かなしくて、

辛くて、

先がない、

どうしようもなかった僕の人生が、

一気に開花して、

まさに人生の春が到来した。

 

そんな勢いがありました。

 

アパートを引き払う頃には、彼女のお腹は大きくなっていました。

 

この時、僕は気が付いていなかったのです。

 

彼女との間に、

いつの間にかできていた、

溝が大きくなっていることを。